サムスンの創業者一族、巨大帝国の支配力維持は困難か
Bloomberg 7月23日(水)8時22分配信
7月23日(ブルームバーグ):韓国サムスン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長の入院は3カ月目に入った。サムスン・グループを携帯電話から生命保険まで幅広い事業を手掛ける巨大な複合企業に育て上げた同氏だが、一族の支配力は今後弱まる可能性がある。
27年前に父親からトップの座を継承した李健熙氏(72)は、携帯電話端末事業でソニーやノキア、アップルまでも抜き去った。長男の李在鎔(イ・ジェヨン)氏(46)は50億ドル(約5100億円)を超えると予想される相続税負担や財閥に対する国内世論の支持低下により、父親のような影響力を維持するのは困難とみられている。
李一族の保有株式は全体の2%未満にすぎないが、複雑な株式持ち合いの仕組みにより、グループ企業74社を支配してきた。健熙氏の陰に隠れる形で1991年から経営に携わっている在鎔氏は、携帯電話の分野でライバル社の攻勢が強まる中で、一族の支配と外部株主の要求に対する防御姿勢を緩めなければならない事態に直面している。
慶熙大学経営大学院のキム・ホンユ教授は「サムスンが世界リーダーになれたのは、李会長が経営を外部の影響から遠ざけておくことができたためだ。株式持ち合い構造が崩れれば、李一族の支配力は弱まり、外部の影響に対してより脆弱(ぜいじゃく)になる」と指摘した。
サムスン電子の保有現金は580億ドルに上るが、さらに増えれば増配を求める株主の圧力は強まる可能性があると、大信証券のアナリスト、クレア・キム氏は指摘する。同氏によると、成長鈍化に伴い、サムスンが戦略の転換や設備投資の削減を求められることもあり得る。
相続税対策でIPO
李健熙氏は韓国一の富豪で、ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、資産は114億ドル。急性心筋梗塞による入院で事業継承の準備はより差し迫ったものとなっている。韓国の法律によると、こうした資産の相続者には50%の相続税が課される。ソウルのシン・アンド・キムの税理士、キム・ヒョンジン氏によれば、サムスンの場合、相続税は60億ドル近くに達することになる。
李一族は相続税支払いと財閥に対する政府の規制強化に対応するため、グループ企業2社の新規株式公開(IPO)を計画している。一つはサムスン・エバーランドから今月社名変更したチェイル・インダストリーズ。動物園やゴルフ場などを経営する小規模企業だが、エレクトロニクスや金融、商社部門に直接・間接出資する李一族の事実上の持ち株会社だ。もう1社は情報技術(IT)サービス会社のサムスンSDS。
李一族は現在、チェイルを完全に支配している。在鎔氏の持ち分は25%。妹の李富真(イ・ブジン)氏と李敍顯(イ・ソヒョン)氏が各8.4%、父親の健熙氏が3.7%を握っている。残りはグループ企業が保有している。アナリストらによると、一族以外の株主がIPOで持ち分を売却するもよう。
帝国内部が露出
IPOによって現金を調達できるほか、より透明な資本構造にすることで政府を満足させられる見込みだが、これまで覆い隠されていたサムスン帝国の一部を公にすることにもなる。株式公開に伴い、チェイルとSDSは決算や人事決定を開示しなければならなくなり、物言う株主の攻撃にもさらされやすくなる。
サムスングループのスポークスマンは、経営継承や持ち合い構造の変化に関してコメントを避けた。また、李一族メンバーへのインタビューも拒否した。
記事に関する記者への問い合わせ先:ソウル Jungah Lee ,jlee1361@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Michael Tighe Fenner, Peter Elstrom ,mtighe4@bloomberg.netRobert
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